星を追う子ども

星を追う子ども




新海誠







 これは少女が走る映画だ。

 とにかく走る、走る。







これは人がモノを食う映画だ。

 アニメでこれほど食べる音の描写が生々しいのって初めて見た。




 

 そして、これは、自分がどれだけ擦れてしまったかをつきつけられる映画だ。

 見た人の世代によってかなり感じ方がちがうんじゃないかな。

 




そこに描かれた成長物語や、命への愛情は永遠の命を持つものだから、新しさがあるかと言えばそれはない。

けれど、丁寧に描かれているからしっかり伝わってはくる。もし自分に子どもがいたら一度は見せたいと思える映画でした。

 

 

 ただ、大人はどうだろう。

 押井風にいえば「結局スホーイの亡霊から誰も逃れられない」ということなのかもしれない。

 

 とにかく見たことあるような風景、見たことあるようなモンスター、見たことあるような、見たことあるような、見たことあるような…

 

 つまりこれはあれとあれとあれとあれから持ってきて再構成したものだよね?と言いたくなってしまうんですね。

 

 それがどれなのかは見てもらえるとすぐわかると思います。

 

 




 最近そういうことが多い。

 

 新作映画のCMを見ても、特にハリウッドのは、要はあれとこれをくっつけてそれ風にした様なもんかな、と思ってしまって、ワクワクしないことがあるんです。

 

 そう考えた後、自分の中の子どもの部分が乾いてしまったような気がして悲しくなる。

 いや、ぼくの場合、まだまだ子ども過多なので、その子どもが大人の皮をかぶった様な、どうしようもない小面憎い感じを自分に対して持つ。

 

 これは、なんともまずいと思う。どうにか子どもの部分に水をやらないと、化けの皮をはがさないと、つまらない中高年になりそう。

 

 こういう、感想を書くって作業も、もしかしたらその一環でやってるのかもしれない。

 作品を見て何かを感じるのは子どもの部分で、それを文章化するのは大人の部分だろうから。

 

 その点からいえば、この作品は子どもの部分の完敗で、大人な部分の感想ばかりになってしまいました。




 でもきっと、スホーイをまだ知らない子どもたちには新しい世紀のスホーイになりうる作品かもしれません。